あの日あの場所、君がいた。
「佐山!お前だけだよこんな点数取ってるのは!!もうクラスの平均点下げるのはやめてくれ!」

「はぁ、すいませんでした…」

「お前そのセリフ何回目!?もう次はないからな!!?」


先生はふぅ、と小さく溜め息を吐くとこちらを振り向かずに教室を出ていった。

ピシャリと閉まるドアの音がやけに響く。


教室には、赤いペケ印の目立つ答案を握る僕と、それを嘲笑うように僕を見つめる机や椅子しかいない。

遠くから、グラウンドを走っているであろう野球部の掛け声が聞こえてきた。



「64点…別に説教されるほどの点数じゃないだろ」


納得いかない僕は、誰に言うでもなく呟いた。

言ってしまえば、他の奴の学力が異常すぎるんだ。

東京に引っ越してきて三ヶ月。

親に無理矢理入れられたのは「都会でっせ」雰囲気満載の名門校だった。

勉強はしたけど、僕がこの学校に入学できたのは何かの間違いだったのではないだろうか。



「はぁ、もう帰ろう」


僕はさっきの先生のように、溜め息をひとつ吐いてから教室をあとにした。

明日から居残りや補習三昧なのかと思うと心底ゾッとする。




……ああ、この世界は、本当につまらない。


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