あの日あの場所、君がいた。


「お、佐山!あれ?お前帰宅部じゃなかったっけ?なんで学校に…」

「谷村…いや、テストの事で先生に説教くらってた」



僕が静かに廊下を歩いていると、トランペットみたいな物を軽々と持った長身の男が声をかけてきた。

谷村 信二(タニムラ シンジ)。クラスメイトだ。


「説教か…お疲れ様。そんなにひどい結果だったのか?」

「ああ、多分…」

「多分って何だよ!!」


谷村は楽器を持っていない左手で僕の背中をバシバシ叩いて笑った。

確かこの人…吹奏楽部だっけ。

てっきり体育会系だと思ってた。


「谷村ー置いてくぞー!」

「あー先輩待ってくださーい!それじゃな、佐山!」


吹奏楽部の先輩らしき人に呼ばれた谷村は、俺にニカっと笑顔を向けるとそちらに走っていった。

きっと彼はとても良い成績だったんだろうなあ。

なんで僕だけ……。

いや、もう結果は変わらないんだ。

せめて次のテスト頑張ろう。



ひとり悩んでいるのも意味ないと判断した僕は、再び足を動かした。
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