いちどてがふれた
夏が近付いた、五月の終わり。
「夏より梅雨がくる」
オロオロと騒ぎ出した幼なじみを横目に、さっき開けてベンチに置いたままのクリームがサンドしてあるひと口クッキーを口に放り込む。
「俺の食うな」
「ん? なんのこと?」
あわてふためいた様子から一転、そんな些細な事には目ざといんだから。
溜め息をバレない程度についてこれ以上会話が続く事のないように、膝上に置いていた小説を手にとって栞を頼りにページを開く。
食べてないとは言わないけど、認めたくないというか、放置していたあんたのせいだろう。
「か、え、せ」