いちどてがふれた
 

「永良(ながら)…今の、私の気のせい幻覚夢まぼろし思い違い、さあどれ」
「……全部違うし。現実」


 少しだけ上擦る声に、緊張くらいはしてるのかと思う。
 てか触れたか触れてないかも解らないくらいだからね、私もそんな照れることないんだよ。


「へっ、うっそだぁー」


 本当はもう少し抑揚がついてもいいはずだったのに、その思いとは裏腹に棒読みのクセに、急に緊張しだしてカラカラと喉が渇く。


「俺のお菓子勝手にとるからだよ」


 緊張した様に感じたのはさっきの、あの一瞬の間だけの演技だったのか、 今は余裕しゃくしゃくでニッと楽しそうに笑っている。

 
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