いちどてがふれた
 

 そんな顔をみて、胸がチクッと痛む。

 そんな理由、解らないけど。


 一瞬、本気かと思った。

 心臓が、速い。


「羽澄ちゃん、人のものは勝手に取っちゃ、めー、ですよ?」


 同い年のしかも私の方が先に誕生日がくるからお姉さんな気がするのに、子どもに言うように、ちゃかしていうから。


「た、べてないし」


 つい嘘をつく。
 まあ、食べたのはバレてるんだけどね。
 てか高校入ってからだからかれこれ二年くらいそういうのあったじゃん。どうして今更。

 あー、なんか体温上がってきた。


「嘘つくのはもーっとダメなんだー。今度は唇奪っちゃうからな」
「は? 何言ってんの」

 
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