君の近くで…
学校の校門の前に車を止めた


まばらに下校していく生徒はほとんどが傘を持ってなくて、小走りに過ぎていく


下駄箱のたありから
背の高い男の子が走ってきた


優希くんだ…


ガチャッ


「おじゃまします。」


優希くんは滑り込むように助手席に座る


体に緊張がはしった


「わざわざ、すみません。」
雨に濡れて水が滴る髪を訳ながら優希くんは言った


濡れた髪と濡れたワイシャツ…今日はグッと大人っぽく見える


「いいえ。
あ、これ。タオル使っていいよ?ずぶ濡れじゃ風邪引いちゃう。」


後部座席からタオルを取り出して優希くんに渡して、車を走らせた


「すみません。」


優希くんはガシャガシャと豪快に頭を拭く

そして
爆発した頭を器用に整えていった


「上手だね。」


私はチラッと優希くんの方を見た


「これくらいは、毎朝やってますから。俺、髪の毛ネコ毛だから…柔くて上手く立たなくて、いつも流すんです。」


優希くんはサラリと言って笑った


「そっかあ。
私もネコ毛だから立たないんだよね…。」


片手で髪をいじった
就職したから真っ黒に染めた髪…
自分でも似合ってないと思う…

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