「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「今度は何?」

つい、刺々しい口調になってしまうが、杏奈はそれもさほど気にする風でもなく、

「そう言えば……洗車場に自販機があった」

記憶を辿っているのか、どこか遠いところに視線をやりながら小さく呟いた。



「はっ? 何の自販機?」


「何って、避妊具に決まってんじゃん。ほら、いつも行く洗車場だってば。そして、いつも無理矢理に手伝わされて私はすっごく迷惑してる、せ・ん・しゃ・じょ・おっ」


「キミ今、さり気に苦情混ぜ込みましたね? 悪かったな、無理矢理手伝わせて」


けどもちろん、俺の反撃なんか当然のごとくスルー。



「何でこんなとこにあるのかなって、不思議だったんだよねー。コンビニで買えないチキンくんのためにあるんだね、何かスッキリした」


「いや違うだろ? 深夜に乗り入れて車ん中でヤるんだろ? 都合良く衝立(ついたて)みたいなのもあるし」


ただ単に、間違った解釈を指摘しただけのつもりだったけど、杏奈の顔がたちまちボンっと赤く染まる。


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