「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「何故お前が照れる?」

嫌な予感しかしないから、はぐらかそうとしてそう言ったけど。



「カーセックス……」

うっとりと口から漏らし、だがしかしその眼差しは、好奇心旺盛なチビッコさながらにランランと輝いている。



「いや、無理だから。車ん中とか絶対無理。狭いだろ? 窮屈だろ? 解放感がねぇだろ?」

全力拒否だ。冗談じゃない。


途端、杏奈の顔から、夢見がちな乙女は消えた。



「俺の部屋も十分狭いだろって? うるせぇよ」

言われる前に先に牽制を仕掛ける。



「何も言ってない! 思ったけど」


「やっぱなー。口で言わなくてもお前の場合、目が言っちゃうからね? 気を付けようよ、まじで」


それに俺、身体デカいから、と言い足して、車の中だけはどうかご勘弁をと切に願う。



が、

「またまたぁ、ご謙遜を。浩平は十分スリムだよ?」


「縦にね? 縦にデカいって意味ね?」



この天然っぷり……。

わざとやってるとしか思えない。


非情に苛々する。


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