「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
偶然の再会は大してドラマチックでもなく。
まぁ相手が相手だから、そんなの全くもってどうでもいい訳だけど。
場所、薬局のスキンコーナー。うん、避妊具とかが置いてあるとこね。
パッケージの『極薄』という筆記体文字に惹かれて手を伸ばした時だった。
「何、お前。彼女いんの?」
再会の挨拶も何もなく、そいつが発した第一声がそれ。
「いて悪いかよ? 何が言いてぇの?」
不快なことしか言わないのは、相変わらずだ。顔にも声にも露骨に不快感を醸し出してやった。
「薄けりゃいいってもんじゃねぇだろ」
バカにしたような呆れ顔でこちらを横目で流し見して、そいつはフッと失笑をこぼした。
こいつとは当たり前のように会話が成立しない。わかってる。わかってはいるけど、腹が立つのも相変わらず。
ほっとけよ、と平静を装って返し、引くに引けなくなった『極薄』を手に取り、レジへ向かった。
一刻も早く、ここを脱出せねば。デート前にこれ以上テンションを下げる訳にはいかない。