「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「ああ、確かに。アレに似てるね? 前の月9に出てた……何だっけ? 名前忘れた」

至極どうでも良さそうに早口で言って、「行こっ?」と、杏奈は助手席側に回って、さっさと俺の車に乗り込もうとする。


ナイスリアクション。さすが、杏奈。



俺ももちろんそれに倣って、不審者から注がれるじっとりした視線は無視して、運転席の扉に手を掛ける。



「ちょーっと待て!」

しびれを切らしたらしい不審者が、不審車から降りてきた。



杏奈は身体をビクッと跳ねさせ、目にも留まらぬ素早さで、車の中に逃げ込んだ。

怯えた視線が俺に助けを求める。それはもう、切実。


そんな杏奈は、か弱くて頼りなげで可愛い。そして、この上なく愛しい。



「てめぇ、何シカトぶっこいて、行こうとしてんだよ? ちゃんと紹介しろって」

城之内は想像以上の剣幕で、ものすごい勢いで俺に向かって来た。



「わかった」

ボソリと返し、助手席側に回ってその扉をそっと開けた。


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