「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
老若に関わらず、女を悦ばせるオシゴト、素敵だと思う。誰にでも出来る仕事じゃねぇよな。

是非、その志を貫けよ。俺は高校の単なる同級生として、陰ながら応援するし。



「浩平と一緒だから楽しいよ?」

さりげなく俺の右手を捕まえて、きゅっと力を込める。



「大変じゃね? お年寄りのお世話なんでしょ?」


「ホント言うと最初はね、全然楽しくなかった。何で私、こんなことしてんの? って。

でもこの仕事をする上で大切なこと……それが何かを知ったら、少しだけど楽しくなった。介護士の仕事って、奥が深いって言うか……うーん……巧く言えない」


照れ臭そうに笑って、ほんのり頬も染めて。


可憐に咲く一輪の花とは、杏奈のことです。

これ、全国共通。



「それを教えてくれたのが――

浩平だから……」

ゆるり、視線を上げて再び俺を見上げる杏奈。とけそうなほどの甘い眼差しに、俺の方がとろけてなくなってしまいそう。


そうはいくか、と激しく自己主張を始める、俺のクララ。

いきり立つ野望よ、鎮まりたまえ。


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