「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「だったら杏奈、子ども欲しいだろ? 一人目はやっぱ、20代のうちに産んどきたくね?」


俺の想い(結婚願望)よ、杏奈に届け。



そしたらたちまち、杏奈が酷く辛そうに苦笑する。やがて、苦い笑みすらその表情から消えた。



やっぱり杏奈、まだ結婚はしたくないか、もしくは――


――相手が俺じゃ、役不足。



後者だったら、まじ凹む。


俺ってそんなに頼りになんねぇかな? 年下だから?


いや、年下とか関係ねぇよな。これは……人間性の問題。



プロポーズのために鎌掛けて、人間性を否定される羽目に陥るとは……。とんだ災難、二次災害。

俺ってば、運命の女神に嫌われてんじゃね?



「ねぇ浩平……」

隣に座っている杏奈が、ポツリ呟くように俺の名を呼んだ。



視線をそちらにやれば、杏奈もこちらを向く。


ほんの少し見上げるようにして俺を見詰める杏奈の瞳が、微かに潤んでいることに嫌でも気付いて、益々気持ちが落ちた。



「何?」

渋々聞き返す。聞かない訳にはいかないと思った。聞きたくないけど。


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