「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
杏奈は戸惑いながらも、ポツリ、ポツリ、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。


「だから……浩平は、私が結婚を望んでるなら、さっさと別れて、そういう相手を探せって言いたいんでしょ?」


「えっ? 何でそうなったの?」


「だって浩平、結婚の話とか、子どもの話とか……わざとらしいぐらいに、そういうことばっか言うから」


「なんで彼氏が結婚を匂わすこと言って、それが別れ話に繋がるんだよ? 違うだろ? フツー逆だろ?」


そして――

俺の『プロポーズ大作戦』は、わざとらしかったんですね、すみません。



まだ俺の真意に気付いてないっぽい杏奈。濡れた瞳で不思議そうに俺を眺めている。



居ても立っても居られず、ベンチから腰を上げて杏奈の目の前に回り込んだ。そうして、両膝を地に落として、杏奈の両手をそっと拾い上げた。



「杏奈は……まだ結婚したくない?」


尋ねれば、驚いたように目を見張る杏奈。でもそんなの構わず続けた。


「俺はしたい。今すぐにでも」


「え? 浩平、それって……」


「けど俺の花嫁は、世界中の男が羨むような美人じゃなきゃ駄目だ」


杏奈はまだ気付かない。ぼんやりした眼差しは、俺に向けられてはいるが、俺を見ていない。


それがもどかしくて、杏奈の手を握った自分のそれに、自然と力が籠る。


< 153 / 241 >

この作品をシェア

pagetop