「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「花嫁は……杏奈じゃなきゃ駄目なんだ」


そう伝えたら、ようやく杏奈と視線が交わった。



「俺が死ぬ時、その最期の最期に、俺は杏奈のために生まれて来たんだって確信しながらこの世を去りたい。

俺のこの先の人生を――



――――杏奈だけに捧げたい」



杏奈の円らな瞳から、ポロン、ポロン、と綺麗な雫が両の頬を伝って落ちる。


「こう……へい……」


俺を呼ぶ声は弱々しく、そして酷く震えていた。



「杏奈……俺と結婚してくれる?」



やっと言えた。回りくどいことなんかせず、ストレートに伝えれば良かったんだ。

そしたら、杏奈を無駄に傷つけずに済んだのに。



杏奈は泣き濡れてぐしゃぐしゃの顔だったけど、それでも俺は、そんな杏奈も神々しいほどに綺麗だと思った。



身を乗り出し、両腕を俺の首に巻き付けて、首筋に顔を沈めた杏奈。

そうして、俺の耳元で小さく囁いた。


「ありがとう。浩平、ありがとう。幸せ。最高に幸せ」



俺もその背中に両腕を回して、世界で一番愛しいその人を、ぎゅうっと力一杯この胸に閉じ込めた。


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