「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「ちゃんと用意しようと思ったのに。指輪とか、プロポーズの言葉とか」

安心した途端、そんな不満が口を衝いて出た。



杏奈は俺の首に巻きつけている腕の力を緩めた。そしてそっと身を離して、俺との間にほんの少し隙間を作る。


未だ杏奈の顔は至近距離にある。少し動いただけで唇が触れそうなぐらい。



照れ臭さと愛しさと。

混じり合う感情に、身体の芯から火照って、全身が焦げ付きそうなぐらい熱い。



「要らないよ、指輪なんか……。さいっこうのプロポーズだった。私にとって、一生の宝物」

言って杏奈は、悪戯っぽく笑った。

頬に残る涙の跡が、陽の光に反射して微かな輝きを放っている。



それは、俺たちの未来を暗示しているように感じた。


微かな煌めきだけど、この世で一番尊くて、愛しくて、大切な光。



米山浩平、25歳。

今、この瞬間、幸福(しあわせ)な一生が約束されました。




[プロポーズ大作戦]Fin.




どこか遠くからボソリ、幼い子どもの声が聞こえてきた。


「びじょとやじゅー(美女と野獣)」



誰だ? 今、核心を突いた悪口言ったのはっ!




H25.10.11
米山(dark)side 完結




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