「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
結婚する前に浩平は言った。
「家事なんか、やれる方がやればいい」
と。
私は言う。
「私、家事全般、やれない、できなーい」
と。
浩平は私の左頬を、その大きくて筋張った右手でむぎゅっと摘まみ、
「そういう『やれる』じゃねぇよ。家事のスキルは、嫌でも何でもこれから磨いて頂きます」
と、目を細めて優しく笑んだ。
「いたっ……痛い……」
「わかった?」
「はい、わかりました。でも浩平、教えてね? 私、本当に家事ってやったことないから、やり方全くわかんないから」
「まじ?」
浩平が目を見張る。ほんの少しだけ大きくなった目に、未だ頬を引っ張られたままだというのに、きゅんと胸の奥が鳴った。
「うん、まじ」
「嘘だろ?」
「嘘じゃないって、この目を見てよ」
「何、威張ってんの? 意味わかんねぇ」
むっつり膨れた浩平も、男らしくて素敵。ちょっと怖いけど。