「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
〔見果てぬ悪夢〕
「夫婦で同じ部署ってのはマズいよなぁ……」
人事の柘植(つげ)次長は気まずそうに苦笑して言った。まるで独り言みたいに聞こえたけど、わざわざ勤務中の私を1階の会議室まで呼び付けておいて、それは有り得ない。
要はこれ、異動通達だ。あまり勘が鋭くない私でもピンときた。
いつから? どこへ?
絶対に異動は免れないと直感的に悟り、もはや明るい未来を祈るしかなかった。
「どうだろう、薬師丸さん――あっすまん、米山さん。本院へ行ってもらえんだろうか?」
「えっ? 本院ですか?」
って、病院ですか?
嫌です、と駄々こねて拒否できたらどんなにいいか……。
「どうして……米山さんではなく私の方なんですか?」
そして、愛しい旦那を売るようなことを言って、足掻いてみたりする新妻であった。
「どっちも『米山さん』じゃない」
どっちでもいーじゃん、的なノリで冗談っぽくツッコミを入れてくる、ハゲ次長。もとい、柘植次長。
ちっとも面白くない。