「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「俺の席、周りが吸わない人ばっかだから」

意外にも普通に答えてくれた。

「そう……なんですね」

しょうもない返ししかできず、また自己嫌悪。自然と視線は自分の膝に落ちる。


「俺でも一応、気ぃ遣ったりするよ」

不意にそんなことを言われ、思わず顔を上げて隣へと目線を戻せば、どこか自嘲気味に微笑む横顔があった。

何これ、ヤバい。この笑顔、ヤバい。悩殺レベル。


「近いの? 家」

沈黙を気まずいと思ったのか、宇留野さんの方から話しかけてくれた。本当に『気を遣ったりする』人らしい。意外過ぎる。


「はい。沼小ってわかりますか? 青沼小学校。その近くです」

その場しのぎに訊かれただけなのに、詳細を説明しちゃう辺り、私ってほんとイタいと思う。


「ああ、じゃあ、『あすなろ』の近く?」

『あすなろ』って……。担担麺が美味いと評判の、こじんまりしたラーメン屋だ。



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