「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「はい、もう激近です。歩いて1分もかからないと思う」

「そうなんだ。俺、あそこよく行く。台湾ラーメンが美味過ぎる」

「担担麺じゃなくて? 担担麺は有名だから、一度食べに行ったことありますけど」

「俺は断然、台湾ラーメン推し」

どこか得意げに言って、宇留野さんはニッと悪戯っぽく微笑んだ。

えっ、意外。本当に意外。


「今度食べてみます。私、辛いの好きだし」

そう返して、私も笑った。やっと心から笑えた気がする。不思議なくらい清々しい解放感に包まれた。


煙草を吸い終えた宇留野さんと、何となく同時に立ち上がった。ラストオーダーまでには戻ると決めていたから、タイムリミットは近い。


宴会場の座敷に靴を脱いで上がる。

私の前を行く宇留野さんは、部屋に入ってすぐの空席を指して、

「俺の席、ここ。替わって?」

ぼそり、小声で言うと、立ち止まることなく私が元居た席に向かった。


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