「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「歌、苦手なんですね」

「いや、寧ろ得意な方」

やけに涼しい顔して答えるから、余計に意味がわからない。

「じゃあどうして?」

「他人(ひと)が自分に酔って歌ってるのを見るのが苦手っていうか……こっちが恥ずかしくなる」

思わず唖然。何なんだこの人は……。


「開いてるよ、口」

すかさず指摘されて、咄嗟に右手で口を覆った。それを見た宇留野さんは、ふっ、と声にならない笑いを漏らす。

「バカにしてますか?」

「してません」

「でも今、笑いましたよね?」

「笑いましたけど、バカにはしてません」

「こんな時だけ敬語とか、余計にバカにされてる気がする」

「はぁ? そんなの言い掛かり」

そう言いながらも、宇留野さんは視線を逸らして俯いた。その肩が微かに震えているのを私は見逃さなかった。更に一つ二つ文句を言ってやろうかと思ったけど、丁度そこで台湾ラーメンが運ばれてきた。

「まあ食べてみろって。激ウマだから」

明らかに話を逸らす目的で発せられた言葉。けれども目の前に置かれたそれは、匂いだけで既に悩殺ものだった。


< 191 / 241 >

この作品をシェア

pagetop