「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「うっまぁー! 何コレ、旨すぎる!」

第一声がこれ。グルメリポーターでも何でもないんだから、稚拙な表現しかできないのは仕方のないことで。

「だろ?」

どうしてだか宇留野さんが得意げに言う。まあいいか。こんなに美味しいものを紹介して貰ったんだし大目にみよう。今年一番のヒットだと思う。ラーメン・オブ・ザ・イヤーだ。


「宇留野さん、ほんとにここよく来るんですね」

「ん、週一は来てる気がする」

「彼女さんとも来るんですか?」

「彼女? いないけど」

「えっ?」

「また口開いてる」

今度はクツクツとはっきり笑った。声は押し殺してるみたいだけど、正直言ってバレバレだ。


宇留野さんは、我が病棟で山口さんに並ぶイケメン。他病棟、他部署の女性職員にも騒がれるほどだ。でも圧倒的に山口さんの方がモテるのは、宇留野さんが彼女持ちだと自ら公言しているから。


「でも彼女いるって自分で……」

「うん、言ってるね。でもそれは訊かれたからで」

「いや、そういう問題じゃなくて。どうしてそんな見栄はるんですか?」

「別に見栄はってるわけじゃ……」

「じゃあ、何なんですか?」

思わず問い詰めるような訊き方をしてしまったら、宇留野さんは困ったような苦笑を浮かべた。


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