「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「これ食べたら帰りますから、ご心配なく」

「別に心配なんかしてないって。いいじゃん帰らなくても。旦那さん寝てんでしょ?」

「何言ってんですか? 他に行くとこなんかないですから、帰ります」

「カラオケでも行く?」

「はっ? 宇留野さんとですか?」

「うん」

宇留野さんは満面の笑みで頷く。この人、何を考えているのかさっぱりわからない。苦手だ、こういう人。外見は最高にイケてるのに中身はかなり残念、勿体ない。


「カラオケは苦手って言ってませんでした?」

「米山さんは自分に酔って歌ったりしなさそうだし。淡々と歌いそう」

「確かに……ご想像通りですけど、だからって、どうして私が宇留野さんとカラオケ行かなきゃならないんですか?」

「俺が行きたいから」

「行きたければお友達誘ってくださいよ。宇留野さんこそ、すごく我儘ですごくめんどくさいですよね? 女性のこと言えませんよ。ちょっとは自覚してください」

「自覚してる。だから恋愛には向いてないんだって。我儘でめんどくさい同士が、うまくいくわけないだろ?」

それを聞いて呆然。一瞬だけ正論のように聞こえたけど、自分の欠点を自覚していながら、それを改める努力をするつもりはないって堂々と言ってるようなもんじゃない。

返す言葉も見つからず、思い出したように再びラーメンをすすった。


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