「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「いらっしゃいませー」
新たな客を迎える店員の声に、出入口を振り返れば、きょろきょろと店内を見回す浩平がそこに居た。
「浩平! こっち!」
手を振り上げて呼べば、すぐに気付いて大股歩きでこちらに向かって来る。
「じゃ、俺はそろそろ」
言って宇留野さんは立ち上がった。ゆったりとした動きは決して慌てた風ではないけど、明らかにタイミングを見計らってのことだとわかる。別に気を遣わなくてもいいって伝えたのに。
宇留野さんは擦れ違いざま、浩平に軽く会釈をした。それが私の目には、やけに意味深に映ってヒヤリとする。やっぱり私、心のどこかにやましい気持ちがあるんだろうか。いや、そんなはず……。
浩平は戸惑いながらも会釈を返し、ほんの束の間、レジで支払いを済ませる宇留野さんを、わざわざ振り返って眺めていた。
そして、宇留野さんがさっきまで座っていた私の向かいに腰を下ろすなり、「今の誰?」と訊く。
「職場の看護師さんで、宇留野さん」
「邪魔したか?」
「どういう意味?」
「デート中だったんだろ?」
平然と言って意地悪く笑う浩平に腹が立った。