「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
どうしてまた話題が私のところに戻ってくるんだと、若干苛ついた。けれど、皆が私の返事を待っているのがひしひしと伝わってきて、仕方なく答える。

「私は……何て言うか、思ってることをそのまま口にしちゃうし、我儘だし、おまけに色気もないんですよね。だからじゃないですか?」

半ば投げ遣りな気持ちで事実を伝えた。

ぷっと、遠くで誰かが吹き出した。見れば、宇留野さんが入口近くの席に、スマートホン片手に座っている。居たのかよ、と、なんだかとてもがっかりした気持ちになる。

「素晴らしい自己分析。完璧じゃん」

言って宇留野さんは、声もなく笑う。

「それ、全っ然、褒めてませんから」

むっとして言い返せば、どっ、とみんなが笑いだす。いやいや、今の笑うとこですか? 違いますよね?

「そういう宇留ちゃんはどうなの? 彼女と巧くいってんの?」

向山さんが宇留野さんに話題を振った。向山さん、素敵過ぎる。益々リスペクト。

「宇留野さんの彼女って、どんな人なんですか?」

すかさず私も応戦。宇留野さんが、『はぁ?』という顔をして私の方を見た。『お前、俺が本当は彼女いないって知ってるはずだろ?』とでも言いたいんだろうけど、そんなもん、知ったこっちゃない。

宇留野さんはスマートホンに視線を落として、「先月別れた」と、どうでも良さそうに答えた。平然と嘘を吐く宇留野さんは、ある意味立派だと思う。

「えーっ? 知らなかった」

と早川さん。

「そりゃそうでしょ、言ってないもん」

「どうして言ってくれなかったんですかぁ?」

「どうして言わなきゃいけないんですかぁ?」

宇留野さんは、早川さんの口調を何となく真似て返し、苦笑した。


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