「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「なに? 早川さん、宇留ちゃんみたいなのがタイプなの?」

向山さんが、隣の早川さんを振り返って尋ねた。

「はい、すっごくタイプです。正にドストライクです」

早川さんは、照れくさそうに微笑んで答え、宇留野さんに熱い視線を送った。たちまちその場に居た全員が、その視線を追うように一斉に宇留野さんを見た。


「何これ? まるで公開処刑じゃね?」

宇留野さんは困り果てたように苦笑して言った。

「『処刑』って……。酷くないですか?」

早川さんは、プクッと膨れて見せた。実に可愛らしい反応だ。


「さあ、どうする? 宇留ちゃん」

向山さんが、更に宇留野さんを追い込む。ある意味、向山さんは最強だと思う。あの宇留野さんに、全く気後れすることなく、真正面から立ち向かっていくあたり……。

「どうするも何も……『褒めてくれてありがとう』、とか?」

「それだけ?」

「うん、それだけ」

「『じゃあ、付き合おっか』とかはない訳?」

「ないない! 俺、彼女とかいらねぇし」

当分は、と慌てて言い足して、誤魔化すように笑った。


「こんな……みんなの前でフラれるとか……私の方が公開処刑されてる気分です」

早川さんは目を伏せて、切なそうに呟く。

「ほんっと、酷い男だよねー? 宇津野仁(じん)は!」

すかさず向山さん。


「ちょっと待って。俺が悪者みたいになってるけど、おかしくね? 俺、全然悪くないよね? あと、フルネームで呼び捨てとか、やめて?」

「ああ、ごめん、ごめん。あんまり腹立たしかったから、つい」

口では謝るも、向山さんは全く悪びれる様子もなく、ケラケラ笑った。つられるように、皆も笑う。早川さんですら、堪えきれずに笑い声を漏らしていた。


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