「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「もうこの話、やめない?」

耐えられなくなったのか、宇留野さんが提案――というか、懇願する。

「逃げるの? 宇留ちゃん」

向山さんは、なかなかしつこい。

「逃げるとかも、違うから。こんな話、みんなの前でするの、おかしいでしょ?」

「二人っきりの時だったらいいですか? ちゃんとお返事もらえますか?」

早川さんは、潤んだ瞳で宇留野さんを見詰めた。


「そういうことじゃなくて。てか、もう既に、ちゃんとお返事したでしょ?」

「いつだったら、二人っきりになってくれますか?」

「ちょっと早川さん、俺の話聞いてる?」

「聞いてますけど、宇留野さんに、もっと私の気持ちを伝えたいです。いつだったら、二人っきりになれますか?」

「いや、もう十分、気持ちは伝わったから、大丈夫」

「でもまだ、全部伝えきれてないです」

「それはそっちの事情でしょ? 俺のほうは、もう十分なんだって。お腹一杯。この辺で勘弁してください」

冗談ぽく笑って言う宇留野さん。


なんだか気まずい空気が流れ出す。

皆の前で告白したけどフラれてしまった早川さんは、引くに引けなくなっている様子。もしかしたら、今まで男の人にフラれたことがないのかも。だって、すごく可愛いし。

だから、どうしたらいいのか、自分でもよくわからなくなっているのかも。


ちょっと気の毒に思えてきたけど、私には関係のないことだ。早川さんだって、私なんかに慰めてもらいたくもないだろうし。


そろそろ休憩も終わる。会話もパッタリ途絶えたところだし、歯磨きをしようと席を立った。

「このタイミングで席外しますか?」

「えっ?」

声の主を振り返れば、早川さんがじっと私を見上げていた。

「わたし?」

「はい、米山さんのことです。他に誰も立ち上がってないですよね?」

早川さん、もしかして怒っている?


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