「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「休憩が終わる前に歯を磨こうと思ったんだけど、いけなかった?」

私には関係のない話だから、いいと思うんだけど、という本音は伏せておく。


「『いけなかった』、です」

早川さんは言う。意味がわからない。

「宇留野さんと米山さん、仲いいですよね?」

益々、意味がわからない。

「仲良くないですけど」

むしろ悪いと思っているんだけど。

なのに早川さんは、明らかに私に嫉妬しているみたいだ。どうしてそんな誤解を招いたのか、心当たりがなさ過ぎて、もう苦笑いしかできない。


「いつも、二人でコソコソ話してますよね?」

ああ、そういうこと。

「コソコソなんかしてませんけど。それに、宇留野さんは、私をからかって楽しんでるだけですよ。というか、いっつもめちゃくちゃバカにされてて、私の方は楽しくないし、不愉快です」

咄嗟にそう言い返してしまったけど、ムキになっているところなんかが余計に怪しいと、すぐに後悔。その場の空気が、一層険悪になってしまったような気がする。


だがしかし、

「あれ? バカにしてんの、バレてた?」

宇留野さんが冗談っぽく言って、ニッと笑みを見せたことで、皆もくすくす笑い出し、その場がほんのり和んだ。

グッジョブ、宇留野。と言っても彼の方は、いつも通り私をディスっているだけなんだけど。


「じゃあ二人は、何の関係もないって言うんですか?」

「あるわけないだろ」

「ないですよ、何も!」

宇留野さんとほぼ同時に、私も否定した。もう、どうしてこんな疑いをかけられてるの、私? ほとほと疲弊しきってしまって、更なる反論を繰り出すパワーが出てこない。

宇留野さんはといえば、可笑しそうにクツクツ笑っている。どういう神経してんだ、全く。


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