「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
その場に残された竹之内さんは、話しかけて欲しいオーラ全開で浩平を見つめている。

そんなの放っておけばいいのに浩平は、

「ここよく来るの?」

と自ら口を開く。彼女の思う壺だ。なんだか無性に面白くない。

「はい。ここ雰囲気もいいし、本当に美味しいし、なのに値段はとってもリーズナブルなんです。薫ちゃんもすごく気に入ってて、二人で月一は通ってるかな」

嬉しそうに答える竹之内さん。

「へえ……」

自分から訊ねておきながら、浩平の相づちは酷く素っ気ない。浩平自身もそれは気付いたようで、気まずそうに視線を竹之内さんから逸らし、店内の待合スペースに移した。

一向に減る気配がない待ち人たちを眺めて、

「まだまだかかりそうだな。俺トイレ行ってくるわ」

私に向かってそう言うと、私たちからすうっと離れていく。自分だけズルい。

「あ、じゃあ私も」

慌てて後を追おうとしたら、薬師丸さん! と背後から旧姓で呼び止められる。

竹之内さんは私のことをどうしても旧姓で呼びたいらしい。

咄嗟のことで思わず振り返ってしまった。くっそぉ……。

「米山さんって本当に素敵ですよね」

竹之内さんはまるで少女のように瞳をキラキラさせて言った。

「そうですか?」

私も浩平に倣って素っ気なく対応。

あれ? と不思議そうに……というよりは、大好物を目の前にした時みたいに喜びを全身から溢れさせ竹之内さんは続けた。

「そっかぁ……やっぱり……奥さんになっちゃうとその魅力に気付けなくなっちゃうのかな」

独り言のようではあるけど、明らかに私に向かって発せられた言葉。

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