「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
今、洗面所から戻って来た浩平に、私のスマホの画面を突き付けているところである。

あのSNSの画像を浩平に見せるのが一番手っ取り早いと思ったからだ。浩平は、首から上が切れて写っていない上半身を目にして、ああ、これ俺だな、と悪びれもせずあっさり認めた。

「職場のみんなとご飯だなんて嘘吐いて、竹之内さんと……」

これ以上は口にするのもおぞましい。果たして食事だけだったのでしょか?

「え? 疑ってんのそこ?」

浩平は、目ん玉が飛び出るかと思うぐらい目を見開いて、驚いた顔をした。予想外の反応に私の方もびっくりだ。

「職場のみんなとご飯はホント。その中に竹之内さんも居た、ただそれだけ」

浩平はつらつらと言い訳を口にする。嘘を言っているようには見えないから言い訳じゃないかも? でもどうにも腑に落ちないのは何故だろう。何かが胸の奥に突っかかっているようで気持ちが悪い。

「どうしてこんな写真をSNSにあげてんの? まるで二人で飲みに来てるみたいに見えるじゃん。こんな、誤解を招くような……いやむしろ、誤解されたいんじゃないの? それに『憧れの先輩』って何?」

思いの丈をぶつけたら胸のつかえがスッキリ取れた。

「そんなん俺に言われても……向こうが勝手に……」

心なしか浩平の語調が弱まった。

いや、そうじゃない。私が言いたいのは、そんなことじゃない。

「浩平さぁ、

――――竹之内さんの気持ちに気付いてるよね?」


浩平が沈黙した。だから私も沈黙する。浩平の口から次の言葉が出るのを待った。

「それは……」

言いかけるが浩平は再び口を噤む。

「うん」

対する私は相槌のように頷いて先を促した。

「気付いてた」

とうとう浩平が自白した。

そうなのよ、私が気に入らないのはそこなのよ。浩平は竹之内が自分に好意を持っていることに気付いていながら、何もせず見て見ぬ振りをしている。絶対に許せない。


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