「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「気付いてて、どうして何もしないわけ? なんでこんな意味深なツーショット写真、黙って撮らせてんの?」

「告白されたわけでもないんだから、なんもできねぇよ。あっちは、猛烈にアプローチはして来るけど、核心には触れずに、こっちが誘ってくるのをひたすら待ってんだから」

「告白してこなくても、こんだけ好き好きアピール激しいんだから、こっぴどくふって欲しいのっ!」

浩平は唖然とした顔で1、2秒フリーズした。

「無茶言うなよ。彼女とは同じ職場だぞ? 邪険になんかできるかよ」

「邪険にしなくても、ちょっと距離をとるとか、こっちはあなたに興味ありませんよって態度で示すとか、いくらでも方法はあるはずでしょ?」

「やってるって、そんなこと。でもあの子、なんて言うか……やけに自分に自信があって……自分に落とせない男はいないって思ってるみたいでさぁ」

浩平はほとほと困り果てた様子で、許しを請うような目で私を見た。

「確かに可愛いもんね、竹之内さん。だから余計に心配なのよ」

「何の心配だよ? 俺が浮気するって? するわけねぇって。そんなのお前が一番よくわかってると思ってたのに……俺の思い上がりだったのか?」

浩平が心なしか語気を荒げたので、はっとした。

そうだった。浩平が浮気なんかするわけないのに。そんなことよーくわかってるはずなのに、どうして疑ったりしたんだろう?

ごめんね、そう謝ろうとした時、浩平が先に口を開く。

「そういうお前はどうなんだよ? 気がある素振りしてくる男いねぇの? 口説かれたりしてねぇの? そいつらにちゃんと、こっちはそんな気ありませんっていちいち伝えてんのかよ?」

「私にはそんな人いないからっ!」

即答したけど、脳裏にふっと浮かんだ人物がいた。宇留野さんだ。

『宇留ちゃんが米山さんに気があるのも、みーんな知ってる』

向山さんがあんなこと言うからだ。もうヤだぁ。慌てて掻き消した。


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