「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
その二日後、宇留野さんと久々一緒の日勤だった。向山さんと浩平のせいで、不必要に意識してしまう。というか、私は無意識に宇留野さんを避けていたようだ。

「不愉快」

ナースステーションで私と目が合うなり、宇留野さんは拗ねたような不満顔で言った。

その場にいた看護師さんたちが、「え? 宇留野さん、急にどうした? 誰に向かって言ってるの?」といった感じでキョロキョロ辺りを見回した。

私は静かにそっと視線を逸らしたのだけど、宇留野さんの方はそうしてはくれなかったようで、彼の目線を追って私に辿り着いた看護師さんたちが、一斉に「えっ?」という顔をした。

まずい、と思った。

咄嗟に宇留野さんに駆け寄り、「ちょっといいですか?」と口では尋ねながらも、腕を掴んで全力で引っ張り、半ば強引に宇留野さんをナースステーションから連れ出した。


そのまま階段へと連行し、踊り場で立ち止まって宇留野さんを振り返った。宇留野さんはムッとした表情で私を見下ろしている。

「ほんとにもうやめてください」

胸元で両手を合わせ、祈るポーズで懇願した。

「何を?」

未だ不満げな表情のまま宇留野さんは問う。

「だから……他の人たちに誤解されるような言動を!」

「誤解されるようなことなんかしてないし。第一、俺たちの間に、誤解されるようなことすらまだ何も起こってないよね?」

あっ、一緒にラーメン食べたことならあるか、と続け、宇留野さんは意地悪く笑った。

「言い方変えます。『この二人、何かある』って思われるような態度をやめてほしいです」

ド直球でお願いしてみた。やんわり伝えても無駄そうだし、二日前、浩平に『もっとはっきり意思表示しろ』的なこと言っちゃった手前、私もはっきり意思表示しないとって思った。男女問わず自信のある人たちって、なかなか手ごわい。

「俺が米山さんのこと一生懸命口説いてるから、俺たちの間に何かあるのは事実でしょ」

「口説かれてる? いやごめん、それは気付いてなかった。でも宇留野さんが私に気があることは薄々感じてました。だけど私結婚してるから困るんです。わかるでしょ?」

「わかりません。俺は自分の気持ちに正直でありたい。正直であることが罪ですか?」

ヘイ! そこの自信満々ピーポー! 一体何を言い出すのだ。


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