「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
席までたどり着き、「浩平、詰めて」と浩平を奥へ押しやった。奥から浩平、私、宇留野さんの順に座る。

店員にあらかじめ五人と伝えて案内された席だったけど、思いのほか狭い。私側に浩平と宇留野さんというデカ二人が居るというバランスの悪い配置だから仕方がない。

向かい側の二人はスリムな竹之内さんと小柄な梅森さん。窮屈そうに座る私たちを見て、申し訳なさそうに苦笑を浮かべていた。

竹之内さんが奥に座っていたため、宇留野さんとは机を挟んで対角線上の席になってしまった。

「宇留野さん、奥行きますか?」

私が尋ねると、

「なんで?」

ややムキになって聞き返してくる。なんでって……主役の二人の間にこんなにも距離があっては、なかなか話が進展しないじゃない。まあいいか。

「じゃあ、まずは自己紹介から。宇留野さん?」

またぼんやりしている宇留野さんを肘で小突いた。宇留野さんはハッとしたように背筋を伸ばし、

「初めまして。宇留野仁です」

と握手を求め、ほんの少し身を乗り出しながら右手を差し出した先は……目の前の梅森さん。ひょっとして宇留野さん、勘違いをしているのでは?

「あの、宇留野さ……」

私が言いかけると、横から竹之内さんが、

「初めまして。写真もすごくカッコよかったですけど、実物はもっと素敵ですね」

と、梅森さんに向かって差し出された宇留野さんの右手を両手で包むように握った。宇留野さんは竹之内さんの手の中から自分の手を自然な感じですうっと引き抜き、

「こちらは?」

と私に向かって訊いた。やっぱりだ。

「こちらが竹之内さん」

「え? じゃあこちらは?」

目をまん丸にして更に尋ねる。頭の中が大混乱の顔だ、実にわかりやすい。

「そちらは梅森さん」

「梅森薫です。初めまして」

とんでもない勘違いをやらかしちゃってる宇留野さんに対して、『大丈夫よ』とでも言っているような優しく包み込む笑顔で自己紹介する梅森さん。ますますやばい展開。『惚れてまうやろー』な展開。

「梅森さんは彼氏とかいるの?」

宇留野さんは自分の気持ちにとっても素直、それは今日とて変わらないのである。そして、起こすアクションも単純明快だ。もうすでに竹之内さんのことは眼中外のご様子。

当然竹之内さんの方は面白くないだろう。恐る恐る彼女に視線をやれば、顔を引きつらせながらもなんとか笑顔を維持してはいるけど、その眼差しは怒りに燃えているのがわかる。


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