「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「フラれたんだって。そんなこと一々言わせないでよ」

カッとなって、強めの語気で言い返した。途端、米山は呆けた顔をして小首を傾げた。


しまった、うっかり口を滑らせた。



「フラれた? お前が?」


「そうですけど。てかもう、忘れたいんだって。人が忘れようと努力してんのに、どうしてそうやって蒸し返すようなことすんの? 鬼だね、米山。バカだね、悪魔だね、妖怪鼻デッカだね」


思いつく悪口を全力で並べてやったけど、米山は怒るどころか眉をハの字にさせた。



「悪かった」


「やめてよ、余計に惨めじゃん」


「どうして? 理由は?」


いつの間に距離を詰めたのか、米山はすぐ目の前に居て。至近距離で見下ろされてかなりの圧迫感だったけど、私の背後には棚があって、もうこれ以上後ずさることができない。


逃げ場がない。


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