「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
ああ、またいつもの様に私をからかって面白がっているんだ。すぐにそう気付いた。



「『お望み』じゃないです、結構です」

きっぱり断って、目の前の腕を下へ払い落とした。



「米山くーん? そろそろ申し送り始めるよー?」

リネン庫の外から女性の声に呼ばれ、「すぐ行きます!」と答えた米山は、それでも視線は私から外さずに後ずさった。やっと離れてくれた、それだけのことで心底ホッとする。



ああドキドキした。心臓が壊れるかと思った。



米山はリネン庫の扉を後ろ手に開けて、そうして身体を翻して背を向けた。けれど、出て行く直前、不意に振り返ると、

「お前ってさ、意外と……」

そこまで言ってニッと両口角を上げて一瞬だけ微笑んで見せた。


そしてそのまま、続きは口にすることなくその場を後にした。



スルスルと静かに扉が閉まるのを、ただ呆然と眺めていた。


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