「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
箱の中から取り出したそれを、土台に差し込みテーブルの上に置けば、

「あら、まぁ……」

と、感嘆に似た声が花恵さんの口から漏れ出た。



「花恵さん、一緒に飾ろう」

言いながら、飾りの入ったビニール袋も箱から取り出して、テーブルの上に置いた。そうしてから、ツリーの閉じた枝を一本一本丁寧に開いていく。



「花恵さんは、サンタさんに何お願いするの?」

金色の星をツリーの天辺に差し込みながら、何気なく尋ねた。


「何言ってんの。こんなオバアのとこに、サンタさんが来る訳ないじゃないの」

花恵さんはそう言って、照れ臭そうに笑った。



「花恵さん、サンタさんを信じてないの?」


「え? お姉ちゃんは信じてるの? 大人なのにおかしいねぇ」


花恵さんがふふふと笑えば、その目じりに幾重にも皺が刻まれる。いい笑顔だなぁ、と心から思った。



「サンタさんはちゃーんと居るよ。ほら、ここに」

言って、自分の胸に右手を添えて見せた。


「誰の心にも、サンタさんは住んでる。だから子どもじゃなくっても、『オバア』でもオジイでも、絶対にプレゼント貰えるよ。信じる者は救われるんだからね」

自分で言っておいて何だけど、随分と臭いセリフだ。これを万が一にも職員か誰かに聞かれたら、死ぬほど恥ずかしい。


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