「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「えっ、そこ?」

こんなに寒いのに、顔が有り得ないぐらいに火照って、大慌てで俯いた。



米山はフッと小さく吹き出して、クツクツと喉を鳴らす。そろり、顔を上げてみれば案の定、目の前の男は愉しげに肩を揺らして笑っていた。


またからかって面白がっているんだ。悔しい……。



再び俯いて、くるくる無駄に回転しながら移動し、そして、米山のはだけられた胸元にスポッと背中から嵌り込んだ。



「ほんとに入んのかよ」

背後で米山が呆れたようにこぼした。けれど、前身頃を重なるぐらいに閉じて、私を包み込んでくれた。


「寒さには勝てないし。しょうがないから、米山の中で我慢する」

なんて、意地っ張りなことを言ってみたり。


女子かっ! と。もう一人の私がすかさずツッコミを入れる。

三十路前の女がこんなこと言ったって、全然可愛くない。それどころか気持ち悪い。



「俺の中って……。お前なんかが入ったら、下痢するわ。マジ勘弁」

そう言ってまた、クツクツ笑う。


むっかぁ……。



でも、『米山の中』はポカポカしていて気持ちがいい。



「あったかい……」

ポツリ、独り言のように呟けば、「ん」と、背後から小さな声が帰って来た。


そして、米山が少し俯いたのか、その顎先が私の頭に微かに触れた。


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