「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
ほんの少し顔を上げれば、私は黒いモコモコしたものを羽織っていて。着ていたダウンジャケットを、米山が私に貸してくれたのだと知る。


隣を横目で盗み見れば、見慣れた薄いブルーグレーの半袖ポロシャツ姿の米山。バツが悪そうな困り顔でこちらの様子を窺っている。



「米山……寒くないの?」

わかり切ったことを尋ねれば、「寒くない訳ねぇだろ」と、はにかんだような笑みを見せた。



胸の奥がじんじんして、そこから熱いものが込み上げてきた。

また両腕の中に顔を埋めて、キュッと目を閉じてそれに耐える。けれど、抑えることができずに私の口から漏れ出た嗚咽は、やがて情けない泣き声に変わった。



「泣くなって」

それは静かで落ち着いた声だったけど、明らかに動揺しているとわかる。


米山をこんな風に困らせているのは、紛れもなく私だった。だから、何とかして泣き止まなきゃって思うのに、そう思えば思うほど、益々泣けてきてしまうこの悪循環。


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