「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
ようやく泣き止んだ私に、
「おら、戻るぞ」
言って、米山がベンチからスクと立ち上がる。ゆるゆると私が立ち上がるのを見届けると、米山は自分だけさっさと歩き出す。
慌ててその後を追えば、チラと一瞬だけこちらを気にして、
「寒い、死ぬ」
ボソリと不満げに言う。
袖を通してしっかり着込んだ米山のダウンジャケット。その前を両手で左右に開いて、
「入るか?」
と、あの日の米山を真似て言ってみた。
「んなことしてるより、歩いた方が早ぇわ!」
そう言って、米山は私の手を取り足を早める。グイグイ引っ張られながら、目指す施設の入口にぼんやりと視線をやった。
確かに。温かい場所への突入まで、もう20メートルもない。
「ねぇ、米山」
「あ?」
歩は進めたままで、面倒くさそうに隣の私を見下ろした米山。
そんな表情も堪らなく好き。
「こんな、性格に難ありの売れ残りで、本当にいいの?」
「随分自虐的なこと言っちゃってますけど、頭大丈夫ですか?」
言って、米山は意地悪く微笑んだ。