殺めたいほど愛してる。
「先生、俺、女いるよ? 気付いてんでしょ?」


唐突に彼がそんなことを言うもんだから、心臓が跳ねた。



わかってるよ、そんなことぐらい。



嘘だとすぐわかるような陳腐な理由をつけてここへ来ない時は、誰か他の女の子を抱いているんでしょ。


わかってるってば。



わかっているのに、彼にそう言われて切なくなるのは何故だろう。




「知ってる。でも……それが何?」

平静を装って返せば、途端、彼は傷付いた顔をする。



何故?


ああ――

そろそろこれ、終わりにしないと、か。





「先生、別れよう」

ベッド端に腰掛けている彼は、目の前の座卓の上の灰皿に、タバコを捻じ込んだ。



私が彼のために買った、アクアマリンのガラス製灰皿。


もう、いらなくなるな。


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