殺めたいほど愛してる。
既に部屋着を纏い、キッチンでコーヒーを淹れていた私は、


「『別れよう』じゃなくて、『終わりにしよう』でしょ?」


スルリとそう口にして、笑顔だって貼り付けて見せた。



だって、彼の記憶に残る最後の私が、取り乱して泣きじゃくる見っとも無い女だなんて嫌だもの。


面倒臭い女だった、とか。

しつこくてうんざりだった、とか。


そんな風に残るぐらいなら、死んだ方がましだ。




コーヒーカップ二つを手にして、何くわぬ顔をして寝室へ戻る。


コトリ――

座卓の上に静かに置いたつもりだったけど、黒い液体はチャプンと波打った。



そのまま腰を落とさず、ベッドに座る彼の目の前に立った。



両手で彼の頬にそっと触れたら、どうしてだか彼は、ゆっくりと目を閉じた。


手の平に伝わる彼の温もりに、息が出来なくなるほど胸が締め付けられる。


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