【完・短編】届かないラブレター。
次は仁の好きな人の話をしよう。
といっても私が勝手にそう思ってただけで、直接聞いたわけでも誰かから聞いたわけでもないから本当かは分からないけどね。
今となっては確かめる術もないけど。
好きだからこそ、ずっと見てるからこそ、分かることってあると思うの。
仁を好きな私にしか分からないこと、見えないものが、きっとあったと思うの。
あったと……思いたいの。
私が仁が……千菜を好きだと思った理由。
まず、仁は千菜のことだけ女子で唯一呼び捨てだった。
私は名字から出来たあだ名だったから、千菜が羨ましくて仕方がなかった。
千菜にだけ与えられた、その特別が…
憎かった。