【完・短編】届かないラブレター。
『選べ』そう言ったくせに私が「かわいい」とポツリ呟いたものを『これで良いんだな』って勝手にレジに持っていったよね。
ねぇ、仁。
貴方はそんなに早く一緒に来た友達のもとに戻りたかったの?
どうして、二人になってから一度も
笑ってくれないの?
貴方は会計を済ませると私に『ほい、じゃ俺、みんなのとこ戻るから』それだけ言って私の前から立ち去っていったね。
『柚は一度も"頑張れ"って言ってくれなかったね』
そう一言だけ残して。
私が最後に見た仁は
泣いていました。
遠ざかる最後の仁は
遠くて遠すぎて
涙が止まりませんでした。
それからのことは
今一、覚えてません。