黒薔薇王子
「まったく……。
降水確率70%、梅雨真っ盛りのこの時期に、傘を忘れる人なんている!?」
「ここにいまーす……。」
「ホントに乃愛は鈍感なのかバカなのか……。」
更衣室でジャージに着替えるあたしを見てる凛に呆れられちゃった。
だって……家出るとき雨なんか降ってなかったんだもん……。
凛が保健室から借りてきてくれたドライヤーをコンセントに挿す。
「あっ。」
スイッチを入れて髪を乾かしていると、ふいに凛が何か思い出したように言った。
「あたし今日委員会だ。
だから相合傘してあげられない……。」
「えーっ!?」
「ごめん乃愛…。
どうする?雨やむか分かんないけど……委員会終わるの待ってる?」
あたしの通う高校の委員会って、確かめっちゃ終わるの遅かった気がする。
だから……、
「ううん大丈夫。
誰かに入れてもらうよ!!」
凛の誘いを断った。
「そっか。ちゃんと言うんだよ?」
「うん!!」
凛は心配しすぎなんだからー♪
でもこの選択が、あたしの人生を大きく変えるってことに、あたしも凛も気付かなかった……。