夏のお供の複雑な事情
中古さんは語り始めました。



「私が買われていったのは、二年前のことだ。

やつらは小学生と幼稚園の子供がいる四人家族だった。

そこでの経験は、地獄そのものだった……。



まず、ここはクーラーが利いているから知らないだろうが、外は物凄く暑い。

その中での労働は、非常に過酷だ。

モーターが熱を持って、火が出そうになる。


次に、大切に扱われることはない。

コードで首を絞められたり、むやみに強弱ボタンを押されて頭が混乱したり……

つまずかれて倒されるのなど日常茶飯事だ。


そして、よく子供が顔に向かって大声で叫んでくる。

どうやら声が震えて聞こえるのが面白いらしいが、それがうるさくてしかたない。


また、子供が風を独占したくて、首を振っている私の顔を押さえつけることもしょっちゅうだった。

無理矢理押さえつけられているものだから、この首は

『バキッ!!バキッ!!』

と物凄い音を立て、もう生きた心地がしなかった……



そうやって頑張っていたのに、やつらは新商品が出たからと、私を一年足らずであっさり手放した。

そうして今ここにいる……という訳だ」
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