夏のお供の複雑な事情


「オレ、買われたくなくなってきた」



安売りくんが、ぽつんとつぶやきました。


「そ、そんなこと言っちゃ駄目だよ!

僕らは扇風機じゃないか!

人間の役に立てなきゃ、作られた意味が……

ないよ……」


そう言う最新型くんの声にも、あまり力はありませんでした。




そのとき、最新型くんの前に一組の家族がやってきました。


「ねぇ、これがいい!!」


小学生くらいの男の子が、最新型くんを指差して大声を出します。


目のつり上がった、とても元気のよさそうな男の子です。


「これがいい!これがいい!」


男の子と一緒に、妹までが手を叩きながら催促を始めました。
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