16の月-過去に戻れたら‥【完結】
≦ピンポン--≧
呼び鈴を鳴らす。
ゆっくりと、扉が開いた。
「ごめん、こんな時間に。」
そこには不機嫌そうな顔をした里美が立っていた。
「…何?なんか用?」
ぶっきらぼうに返す里美。
「……話したいことがあって‥」
里美が大きくため息を着く。
「電話でいいのに。」
「いや‥直接話したかったんだ。」
「ふーん、どうせあの子の事でしょ?」
俺は言葉に詰まる‥。
「修吾は、あの子に同情してるんだよ。
あの子に何があったのかは知らないけど、
同情と恋愛感情をごちゃまぜにしたら駄目だよ。
修吾は、あの子の事を好きじゃない。
同情してるだけ。ね、解った?」
里美は俺をまくし立てる。
「…‥違う!確かに、始めは同情だったかもしれない‥
でも、今は‥違うんだ…」
里美の眉が釣り上がる。
「同情だよ。それは。修吾は勘違いしてるだけ!」
同情…
同情なんかじゃない…
「そんなんじゃない、す‥‥」
好きなんだよと言いかけた時----
「アタシ、別れないから。」
と里美が言った。
「でも…もう‥」
「絶対に別れないから。何があっても!」
そう言って、里美は、激しく玄関のドアを閉めた。
俺は呆然とする…
同情なんかじゃない…
同情なんかじゃない…
何度も何度も頭の中で繰り返した‥。