16の月-過去に戻れたら‥【完結】
< 水池修吾様 >


水池君、お元気ですか?
手紙なんて書いてしまってごめんなさい。

もう、私の事なんか忘れてしまったでしょうね。
でもこれが最初で最後の手紙です。


5年前、私の父が普通に生活を送っていたなら、
私と水池君はずっと一緒に居れたのかもしれません。

水池君という存在が私の中で唯一の心の拠り所でした。
あんな事があっても、時が解決してくれると
ひたすら信じる毎日でした。

確かに、水池くんに言われた言葉には傷つきました。
だけど、今では私もその気持が解ります。
きっと誰もがそう思ったと思います。
だからもう自分を責めないで下さい。


再び出会って、
水池君が、一生懸命、私の事を考えてくれた事。
追いかけて来てくれた事。
泣いてくれた事。
一生忘れません。

今となっては、あの時自分に素直になれなかった事や
笑えなかった事が、唯一の心残りです。

でも、それは水池君に対する私の小さな復讐だったと
笑って許してやって下さい。


私には、水池君との思い出だけで十分幸せです。

私の好きな人が水池君で本当に良かった。

私も、これからは「高宮由香里」として
堂々と生きていくつもりです。



もう会う事はないと思います。

だけど、水池君の幸せを誰よりも願っています。


貴方に会えて本当に良かった。
ありがとう、そしてお元気で‥。


高宮由香里
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