16の月-過去に戻れたら‥【完結】
「おまえさー!どの面引っさげてここに来たんだよ!!」
吉村さんの取り巻きの1人が鞄を高宮さんに投げつけた。
教室の目の前で足止めを食らった高宮さんは、
顔面に当たった鞄の勢いで尻餅をつく‥
「えっ?なんとか言ってみろよ。この盗人野郎!人殺し!!」
そう言ってもう1人の取り巻きが高宮さんを蹴り上げる‥
吉村さんを見たら、遠くから高宮さんを見下げ、唇を噛み締めていた‥
誰も一言も喋らない。
これだけの人数が傍観しているにも関わらず
辺りはシーンと静まり返っている。
高宮さんは両手を床に着いたまま、俯いていた。
「土下座しろよ!吉村さんに!!えっ!土下座しろって言ってんだろ!」
取り巻きの女が、女と思えないほどの勢いで、高宮さんの髪を引っ張る。
僕は…
僕は一体どうしたらいいのだろうか…
こんな時、映画やドラマのヒーローは飛び出して、
彼女を助けるのだろうけれど
実際、あんな目に遭ってる彼女を見て、
僕の身体は凍りついたようにピクリとも動けなかった‥。
それどころか、僕にとばっちりが来ないかと
ヒヤヒヤした…
「………す…す…すいませんでした……。」
高宮さんの小さくか細い声が聞こえた。
床にぴったりと頭をつけ、土下座をさせられている。
ボサボサになった髪で顔が見えない。
痛いほど静まり返った廊下で、
高宮さんのすすり泣く声しか聞こえてこない‥。
土下座する高宮さんの頭を更に蹴りあげた女の取り巻き。
蹴られた勢いで、高宮さんは廊下でべたりと崩れ落ちていた‥
先生の駆けつける音で、
隣のクラスも僕達のクラスも無理やり教室へと入れられた。
「すごかったねぇ‥」
「こわい~っ」
「吉村さん可哀想~‥」
など好きずきに話をする。