16の月-過去に戻れたら‥【完結】
僕が顔を出すと、顔を少し赤らめた高宮さんという子が立っていた。


「ヒューヒュー」とベタな言葉で茶化す奴らを手で押しのけながら
高宮さんの元へと行く。


「あ‥あのっ、ちょっといいですか?」
高宮さんは僕の返事を待たずにスタスタと歩き出す。


サラサラと猫っ毛の細い髪が僕の前で揺れていた。


高宮さんとは、放送部で1度だけ一緒になったことがあった。
高校入学した頃、先輩の勧誘を断れなくて
無理やり放送部に入れられたんだけど、
結局1度顔を出したっきりで、
その後、僕はサッカー部へと編入したんだ。


それっきり、高宮さんとは廊下ですれ違うくらいで
面識はほとんどなかった。


僕は高宮さんを追って、人気のない廊下へとおびき寄せられる。
不意に高宮さんが振り返り、立ち止まった。

少し切れ長の目が僕を見上げ見つめる。




これは…もしかして‥



僕の心臓がドクドクと脈を打つ。



「水池君、今度一緒に花火大会行きませんか?」



思わず、自分に指を差した。



高宮さんはコクリと頷いた。




僕はゴクリと生唾を飲む。
なんせ純情な僕は、16年間告白なんてされたのは初めてだった。
照れ臭いのが勝って、素直にうん。と言えない‥



「‥まぁ‥いいけど‥」



「ありがと!じゃあ日曜の18時に西山のコンビニの前で!」
そう言った、高宮さんはクルリと背を向け走り去って行った‥。




ふと横を見る。
窓に写る自分を見て、やっぱ僕ってイケてるのかな‥
なんて思ってみたり‥


自然とニヤつく顔を引き締め、教室へ戻った。


「なんだって?」
更に、ニヤニヤと興味津々で聞いてくる
中野の頭を教科書で殴った。


もうその日は、授業なんてまったく頭に入らなくて
廊下からチラリと見えた高宮さんを目で追っていた。




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