16の月-過去に戻れたら‥【完結】
「兄ちゃん、ごめんねぇ…あの子、会いたくないって‥」
オバサンが困ったような顔をする‥
「…そうなんですか…」
俺はなんとなくそんな気もしていた‥。
オバサンは再び、魚を機械に入れ作業に戻っている。
「あの…、石野さんの事聞いてもいいですか?」
オバサンは手を動かしながら
「いいけど、兄ちゃん、あの子の彼氏かなんか?」と訪ねてきた。
「…いえ…違います‥昔の知り合いなんです‥」
と答える。
「ほほぉ~あの子に知り合いなんていたんだねぇ。
2年前にお母さんが亡くなってから天涯孤独なのかと思ってたわ~」
「…えっ…お母さん、亡くなったんですか?」
オバサンはコクコクと頷く。
「なんだったかしら‥確か癌で亡くなったはずよ。
でね、独りぼっちになった由香里ちゃんを、
たまたまお母さんの知り合いだった光本社長が引き取ってあげたのよ。
従業員としてね。ほら、あそこがあの子の住まい。」
オバサンは工場の2階のくたびれた部屋の窓を指差す。